福岡県、Azuma medakaさんの作るメダカへの想い

先週の土曜日は福岡在住のAzuma medakaとしてヤフオクなどで出品させておられる田中さんの飼育場にお邪魔した。

Azuma medakaの田中さんのメダカは、ヤフオクで落札させて頂いたことが何度もあり、しっかりとしたメダカを送っていただいたこと、そしてAzuma medakaの田中さんが室内飼育水槽の見本にされた、川崎市在住の中里良則さんの飼い方について、LINEでやりとりしたりと、メダカについて情報交換をしてきていたのである。

田中さんは前向きな考え方をお持ちの方で、またその行動力の素早さに個人的に興味を持っていたのである。そして、出会えた縁もあり、当社から刊行する『メダカ品種図鑑』にもAzuma medakaさんから写真をお借りしてもいた。

今回、日蘭佐賀の品評大会取材に合わせ、Azuma medakaさんの飼育場を訪問させていただくことにした。

まずは室内の水槽群から!入って、飼育場を見せていただいて、「本当だ!中里さんの飼育場と一緒だ!」と思ってしまった。

田中さんにとってはこのメダカが初めて飼育する生物となったそうで、「最初は中里さんの水槽の中のスポンジフィルターが何なのか?も解らなかったんです」と言われる。何度も中里さんの飼育場の写真を見て、その中の様子を再現、当時、中里さんのメダカをヤフオク出品されていた方に何度も質問されて、少しずつ飼育環境を整えていかれたそうである。

「スポンジフィルターにしても種類がいくつかあり、中里さんの使っているものがどれなのか?飼育しながら製品を替えてみたりしましたよ」と田中さん、そう、スポンジの品質によってろ過効率が異なることを実践から学ばれたのである。

田中さんのメダカ飼育歴は3年ほどだそうで、ここまでの水槽環境を見よう見まねでよく再現され、コントロールされていると感心してしまった。ベアタンクにスポンジフィルターの水槽環境は簡単そうに見えるだろうが、実は適切な水換えが不可欠で、経験が必要なのである。

室内の飼育水槽では、主に青幹之系統のメダカを繁殖、育成されておられた。

こちらが田中さんの自宅前の飼育場。表面積の広い大型の容器が並んでおり、この表面積の広さはメダカの飼育環境にとってとても大切なのである。

こちらは田中さんの自宅の横に位置する飼育場(汗)

そして、家の裏手には、メダカ飼育専用のハウスが作られていた。

ハウスの中もご覧の通り!こちらでは、積極的に繁殖させようという田中さんが特に重要視されるメダカの飼育、繁殖をされていルそうだ。

中に泳いでいるメダカたちはすこぶる健康であった。

田中さんの飼育している品種数は100品種に近い。そして、この容器の数も430個に及ぶ。
自宅周りに容器を増設していき、ほぼ家を一周した時に、「水換えが間に合わない」と思ったそうである(笑)

でもそこからが普通の人と違うところ、田中さんは多忙な仕事をしつつ、週一回ペースで各容器の水換えをしっかりとしておられるのである。

大型の排水ポンプを使い、一日平均、ジャンボだらいを60個平均で水換えしなければならないのであるが、それをしっかりとこなしているからこそ、健康で、しっかりとした体格を持ったメダカを作れるのであろう。

それでは田中さんのメダカを紹介しておこう。

白カブキの発展型である。とても魅力的な外見である。対外光が十分に発光しており、黄幹之ベースがよく似合っているメダカである。

こちらも白カブキの発展型。

そしてこちらもである。この表現のメダカも、もしかすると各地で似たようなタイプが出来ているかもしれないが、洗練されたメダカである。

こちら、田中さんの十八番の品種の一つ、幹之ロングフィンである。今まではそう呼ばれてきたのだが、松井ヒレ長やスワロータイプのメダカが普及した今では、ロングフィンと言うより、ハイフィンと呼んだ方がしっくりと来る気がする。

この特徴はオスに出るもので、メスは普通種同様である。

今では、体外光も吻端まで届くものばかりになっており、特に横見で楽しめる水槽飼育に向いたタイプと言える。
海外のメダカ愛好家が集うページでこの写真を紹介したところ、やはり反応が良かった。

こちらはAzuma三色と呼ばれる田中さんのオリジナルブレンド(笑)の透明鱗三色である。透明鱗三色の三系統ほどを交配され、赤さ、そして黒ブチをより美しく発色する個体の出現率を高めておられる。

こちらもAzuma三色。

これもAzuma三色である。

このAzuma三色の黒ブチの顕著な系統を選抜交配されたのが、この黒勝ちのタイプである。どうです?魅力的でしょ?こういった黒ブチの発色はランダムな交配からは生まれてこないのである。種親の選定、そして少しの遺伝的な知識が必要である。

こちらも黒ブチの顕著なAzuma三色である。

さて、こちらも田中さんが累代繁殖されている赤兎錦である。作出者は愛媛の垂水政治氏で、元々は田中さんと同郷、福岡県の清原 光さんが作られた非透明鱗三色の先駆けとなった三色幹之、ヒカルスペシャルを垂水さんが別の非透明鱗と交配されたもので、
田中さんの赤兎錦は垂水さん→葵メダカさん→田中さんと渡った直系である。

改良メダカは、作出者の血統を守っていくところにも魅力があり、すぐにブリーダーネーム(ハウスネーム)を付けたがる人も少なくないが、そういった元親が判るメダカにブリーダーネーム(ハウスネーム)を付けるのは、改良メダカに対して失礼である。その人のお金儲けの手段でしかないと自分は思っており、そういった類の人には自分は興味がない。

赤兎錦のような絶対数が少ない品種を田中さんのように系統維持されてくださっていることに感謝である。

こちらも赤兎錦。

これも赤兎錦である。雲州三色、あけぼの、平和錦、万葉と、今年は非透明鱗三色が一気に人気を高めた年であるが、この赤兎錦も非透明鱗三色の一系統として、今後、もっと飼育されるようになり、さらに表現を変えて行く楽しみがあるメダカなのである。

こちらは青黒ベースのカブキである。このカブキもオリジナルから進められた外見を見せている。

こちらもカブキである。

Azuma三色がいれば、当然、Azuma紅白も分離してくる。それを田中さんはしっかりと分離、維持されていた。

こちらもAzuma紅白である。

これはカブキ斑(ブチ)として分離、維持されているメダカである。表現としては、あけぼのの小寺さんが維持されている“金色夜叉”と同様であろう。

こちらもカブキ斑(ブチ)である。これから田中さんがこのタイプをどう進めていくのか?楽しみである。

田中さんの三色ラメである。静楽庵血統の最も長くやってきている三色ラメだそうだ。

こちらは三色ラメ新系統である。新しい品種もどんどん導入されるのが田中さんのメダカの楽しみ方の一つなのである。

こちらも三色ラメ新系統である。

田中さんの屋号となっているAzuma medakaのあずまは、田中さんの本業である『生そば あずま』という店名から取ったもので、田中さんはその『生そば あずま』の開店前から日本そばを追求され、今では20数店舗となった『生そば あずま』を社長とともに店舗拡大を成し遂げた方である。

「日本で一番良い蕎麦粉を探したり、自分でそばを打って、日本蕎麦を追求された」そうである。「日本で一番の蕎麦粉を入手するためには、その蕎麦粉を扱う会社に何度も通って、やっと手に入れましたよ」と田中さん、「これだ!」と決めたものを諦めることなく願いが叶うまで諦めない。それが田中さんの精神なのであろう。

その探究心が今では改良メダカに注がれているのである。

「メダカってやっていることはシンプルじゃないですか?」と田中さん、「卵を採って育てる」というシンプルな中に、奥深さがあるのが改良していく作業であり、「突き詰めれば突き詰めるほど、その奥深さを知ることになりました」と言われる。

「終わりがない」改良メダカ作りに魅せられた田中さん、これからも魅力的なメダカを多数、作っていかれるだろう。

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